AMINO EVIDENCE

アミノエビデンス

【スポーツ】運動時の栄養改善と造血作用

社会人ラグビー選手のアミノ酸長期摂取研究

日本のフットボールリーグで連続7年間優勝した社会人ラグビーチームのメンバー23人に協力を得て、12種アミノ酸混合物を長期に摂取したとき、体調などがどのように改善されるのかをスポーツ栄養学の観点から研究した結果、

ワンポイント解説

トップアスリートであればあるほどプラセボコントロール研究を行うことは難しい。選手に研究の趣旨を説明しても、同意が得られないのである。確かに最初は何をわがままなことを言っているのかと思ったものの、プラセボを飲みたくないという選手の気持ちは尊重しなくてはならない。1994年当時は、まだ食品を用いた研究の規定がなかったので、病院における薬の倫理委員会の規定に順ずるということで実験を行った。また、プラセボが使用できなかったので、時系列(アミノ酸摂取前・後・非摂取の翌年同月)の血液指標との比較を行うことにした。実験開始前の血液指標からは、マラソン選手に見られたような貧血や筋肉炎症、肝機能への負担などの傾向はなかったが、驚くべきことに総コレステロール値が169±5mg/dLと低く、低栄養の傾向を示すことがわかった。

アミノ酸一口メモ

エビデンス

[結果]
1)12種アミノ酸混合物AVP3600を1日当たり9g、90日間摂取することで、ヘモグロビン、赤血球数などが増加した。
2)また、総コレステロールの増加から、栄養状態が確実に改善されたことが明らかになった。
3)さらに、ALPが有意に減少して肝機能が改善傾向を示した。

[考察]
一般に血液量は気温や運動量によって変動する2,3)。今回の実験は夏季に行われたことから、ヘモグロビンなどの増加は発汗などによる血液濃縮による変化とも考えられる。そこで、摂取90日後のデータを翌年同月のアミノ酸非摂取時のデータと比較したところ、翌年同月には、ヘモグロビン、赤血球数が有意に低下していることから、ヘモグロビンの増加はAVP3600を摂取したことによる変化であることがわかる。また、ヘモグロビンや赤血球が増加するときには、血清鉄は消費されて一時的に減少傾向を示すが、AVP3600を長期にわたって摂取したことにより血清鉄も増加していた。これは、アミノ酸混合物の長期摂取によって造血作用が発現したと考えることができる。
栄養状態の指標となる総コレステロール(TC)は、AVP3600摂取前は169±5mg/dLと低かったが、摂取後は191±8mg/dLと有意に増加し、栄養状態が改善したことがわかる。アミノ酸を摂取すると、タンパク質を摂取した場合よりもTCが増加することはこれまでも報告されており、TCを増加させるアミノ酸の組み合わせについても検討されてきた。その結果、リジン、ロイシン、メチオニンなどのケト原性アミノ酸の摂取がTCやLDLを増加させることが明らかにされている4,5)。
したがって、今回のTCの増加は、AVP3600に多くのリジン、ロイシン、メチオニンが配合されていたことによる結果であると思われる。

AVP3600摂取後に肝機能のパラメーターであるALPが低下した選手が多かったのは、予想どおりであった。これまでも、肝硬変患者がBCAAを多く含むアミノ酸混合物を1日10〜15g、1〜2カ月間経口摂取した結果、ALPやγ-GTPが有意に減少して、肝機能が改善する傾向を示したことが報告されている6)。今回、AVP3600摂取をやめた翌年同月にはALPが再び増加していることからも、アミノ酸混合物の摂取期間だけ肝機能の改善が得られたことがわかる。

体感調査では、摂取45日後の時点では23名中の14名が活力の増加を感じていて、約半数が身体的コンディションの改善、疲労からの回復が早くなったことを体感していた。90日後には23名中の20名が活力の増加を感じていて、22名が身体的コンディションの改善を体感していた。約3分の1の被験者は食欲の増加、筋肉痛の軽減、腰痛の軽減を感じていた。
文献
1)Nishitani S, et al:Biochem Biophys Res Commun 313:387-389, 2004.
2)Convertino HA: Med Sci Sports Exerc 23:1338-1348:1991.
3)Davy KP and Seals DR: J Appl Physol 76:2059-2062, 1994.
4)Kurowska EM and Carroll KK: J Nutr Biochem 2:656-662, 1991.
5)Kurowska EM and Carroll KK: J Nutr 124:364-370, 1994.
6)Suga M, et al: JJPEN 16:221-226, 1994.

出典:「アミノエビデンス255―なぜ効くのか・何に効くのか」