AMINO EVIDENCE

アミノエビデンス

【スポーツ】運動時の筋肉痛予防

中高年のエアロビクス運動におけるアミノ酸摂取研究

杏林大学医学部総合医療学の林潤一教授らは、アミノ酸による運動機能の改善効果を評価することを目的に、エアロビクスダンスを定期的に行っている一般の中高年男女を対象に、筋由来酵素の血中濃度の変動を調べる研究を行った。

ワンポイント解説

運動後の筋肉痛は、遅発性筋肉痛といわれており、運動直後よりも時間の経過とともにひどくなるのが一般的である。「若い時は運動翌日に筋肉痛になったけれど、年を取ってくると3、4日後にひどくなる」といわれているが、加齢に伴い筋肉痛の発現が遅くなるということは科学的に証明されていない。また筋肉痛がひどいとCK値も高くなるのかというと、必ずしもそうではない。しかし、アミノ酸を飲んでいると「筋肉痛が軽減した」という体感は、トップアスリートからのみならず、日常生活者からも数多くの報告を受けている。
健康を目的として中高年がエアロビクスを始めた時に、アミノ酸の摂取がどのような効果をもたらすのかについて検討した。

アミノ酸一口メモ

エビデンス

[結果]
1)ブラセボ摂取群は運動前に比べて運動後の血清ミオグロビン値が245%と著しく上昇したが、アミノ酸摂取群では163%の上昇率だった。2)クレアチンキナーゼ(CK)値は、ブラセボ摂取群では運動後に126%上昇したが、アミノ酸摂取群では113%にとどまった。

[考察]
ミオグロビンは筋肉ヘモグロビンとも呼ばれ、骨格筋や心筋の細胞質に多く存在するヘムタンパク質の酵素である。ヘモグロビンと同様に酸素と結合していて、組織への酸素供給に関与しているが、筋肉組織の破壊によって血中に放出され、その後、尿中に排泄される。したがって、血清ミオグロビン値の増加は、骨格筋または心筋の破壊量を反映する。また、CKもやはり筋肉が破壊されるときに放出される酵素である。

今回の検討から、アミノ酸摂取群では運動による筋肉からの酵素逸脱を有意に抑制することが認められた。このことは、筋タンパク質の分解量が少なく、筋組織のダメージが少ないことを示しており、運動後の疲労回復も早くなることを意味している。スポーツ選手ではなく、趣味あるいは健康維持のために運動を定期的に行っている一般の人でも、分岐鎖アミノ酸、アルギニン、グルタミンなどの12種アミノ酸混合物(AVP2000)を摂取することによって、運動による筋肉分解が抑制されることが明らかにされたわけである。

林教授によると、アルギニンには血管内皮細胞における一酸化窒素産生作用があり、この一酸化窒素が血管のリラクゼーションに働くことで全身の微小循環が改善されるという。微小循環が改善されれば全身の細胞、特に筋肉細胞への酸素供給量が増加するために、筋肉細胞内でのエネルギー産出もスムーズになり、筋力が強くなるだけでなく、筋肉疲労も軽減され、疲労回復も早くなる。
ちなみに、脂肪は筋肉内で燃焼することから、肥満を防ぎ、生活習慣病を予防するうえでも筋肉を維持することは有効である。また、全身の微小循環が改善されれば、長期的には動脈硬化や血管障害に対する予防効果も期待できる。すなわち、アミノ酸を日常的に摂取することは、運動機能がアップするばかりでなく、健康維持の上からも大変有効といえる。
文献
1)林潤一他:エアロビクスダンスによる筋肉傷害に及ぼすアミノ酸複合摂取の保護作用。第39回日本臨床生理学会.2002
2)Federation Proc 37: 2301.1978

出典:「アミノエビデンス255-なぜ効くのか・何に効くのか」