AMINO EVIDENCE

アミノエビデンス

【健康】心疾患リスクの軽減

「物忘れ」が気になる中高年の認知症予防成分プラスアミノ酸摂取研究(第2報)

「物忘れ」を自覚する中高年を対象に、DHA、イチョウ葉エキス、レシチン、ビルベリーエキスなど脳機能の改善にエビデンスのある成分に、アミノ酸(アルギニン)とビタミンを加えた混合物(DGA500)の摂取で生活習慣病との関連が報告されている脂肪酸代謝酵素の活性にどのような変化が見られるか検証を行い、脳年齢との関連について解析を行った。

ワンポイント解説

DHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸の生合成には不飽和化酵素と鎖長延長酵素が関与している。不飽和化酵素は不飽和化する部位によって分類されている。近年、不飽和化酵素の活性と生活習慣病との関連に注目が集まっている。例えばこれまでに、Δ5不飽和化酵素活性が高い人ほど冠動脈性心疾患のリスクが低下すること1)や、 Δ9不飽和化酵素活性と認知症診断テストのスコアに相関があること2)などが報告されている。

エビデンス

[結果]
1)Δ5不飽和化酵素活性が摂取3ヵ月で上昇し、摂取終了1ヵ月で低下したため、心疾患リスクの減少が予測された。
2)Δ9不飽和化酵素活性が摂取3ヵ月で低下し、摂取終了1ヵ月で上昇した。また、Δ9不飽和化酵素活性と脳年齢と実年齢との差に正の相関が見られ、脳機能の改善が予測された。

[考察]
不飽和化酵素は脂肪酸の代謝に関与する酵素の一つであり、近年不飽和化酵素の活性と生活習慣病との関連についての研究が多くなされている1)2)。今回、本サプリメントの不飽和化酵素に与える影響について、解析を実施した。

DGA500の摂取で、有意なΔ5不飽和化酵素活性の上昇が確認された。また、以前の研究で、DGA500の摂取で動脈硬化指標の一つである血中ホモシステイン濃度の低下を報告している。脂肪酸は赤血球膜の主要成分であり、その組成が血管の流動性などの機能に影響を与えることが知られている。DGA500の摂取で脂肪酸バランスが整ったことにより、血液の機能が改善した可能性が示唆される。

DGA500の摂取で、有意なΔ9不飽和化酵素活性の低下が確認された。また、以前の研究で、DGA500の摂取で認知機能が改善することを既に報告している。そこで認知機能とΔ9不飽和化酵素活性との関連を調べたところ、有意な正の相関が確認された。DGA500の摂取で血液の機能が改善した結果、脳機能に影響を与えた可能性が示唆される。

不飽和化酵素活性と生活習慣病に関する研究では、サプリメントを摂取することによる不飽和化酵素活性の変化を検証したものはあまり多くない。一方、DHAなどの多価不飽和脂肪酸は不飽和化酵素を含む脂肪酸合成酵素の発現を抑制することが細胞を用いた実験では示されている4)。本試験の結果よりヒトがサプリメントを摂取することで体内の不飽和化酵素活性バランスを調整し、生活習慣病予防に役立つ可能性が考えられる。

今回注目すべきは、脳機能によいとされる複数の成分に加えアミノ酸を“少量”ずつ組み合わせた混合物で、ヒトの酵素活性レベルで脂質代謝への有用性が確認されたことである。単一の成分による研究は多く実施されているが、少量ずつ一緒に摂取することで相乗効果を発揮したと考えられる。さらに各成分の最も有効な組み合わせを明らかにする検証に期待したい。
文献
1) Y Lu , et al : PLoS ONE , 7(7): 1-7: 2012
2) G Astarita , et al : PLoS ONE , 6 : 1-9: 2011
3) A Kawashima , et al : J Nutr Sci Vitaminol, 55 , 400-6 : 2009
4) S D Clarke : J Nutr , 131 , 1129-32 : 2001

出典
大谷勝他:認知症予防のためのサプリメントを「物忘れ中高年」が長期摂取する栄養学的意義について(第2報).第33回日本臨床栄養学会.2011
大谷勝他:DHA、イチョウ葉エキス、アミノ酸配合サプリメントが「物忘れ中高年」の脂肪酸代謝に与える影響.第13回日本抗加齢医学会.2013
大谷勝:Dr.アミノのホントに効くサプリ.エクスナレッジ社.2010